モノを大切にする。

「ただいまー」と言ったすぐに、
「静かにして!」
なんとチャックが机に向かっている。
読書感想文の追い込みらしい。
夏休みの一番嫌な宿題だったことを思い出す。
しばらく横で見ていると、
「手が痛くて書けない。ほら赤くなってる」
がんばり過ぎたのかなと思ったら、小さな手に隠れるくらいの短いえんぴつで書いていたのだ。
「長いえんぴつに変えてみたら」
「まだ書けるしもったいないよ」
と言いつつ、長いえんぴつに渋々交換して書き始めた。それからなにも言わなかった。字もすこしきれいになったように見える。
原稿用紙一枚を書き終えて、
「あした、残りの半分書くから」
余裕の表情だ。
何かわかったようだった。

手際よく片づけ始めたと思ったら、
「ウ〜ン、ウ〜ン」
えんぴつ削り機の音がする。
えっ?
チャックがあの短いえんぴつを、さらに削っているではないか。
そして、いつでも使えるように片づけた。
何か別のことに使ってくれることを、信じることにした。